木造耐火建築物・木造耐火住宅

木造耐火建築物

1.はじめに
2.防火地域での木造耐火住宅
3.準防火地域での木造耐火住宅
4.特殊建築物での木造耐火建築
5.耐火建築物とすることによる土地有効活用
6.準耐火建築物と耐火建築物との違い
7.まとめ

1.はじめに

平成12年(2000年)の法改正により、性能規定化が進み、木造での耐火建築物の禁止規定が廃止され、木造で耐火建築物を建てることが可能となりました。

我が国においては、豊かな森林資源を有しているにも関わらず、有効に活用出来ていないのが現状となっていま。そのような状況で、国の施策としても、木造建築の促進により、森林資源の有効活用を即す動きとなっています。

ここで、木造耐火建築物により、具体的に建築可能な建築物について述べさせていただきます。

木造耐火建築物

2.防火地域での木造耐火住宅

防火地域においては,

3階建て以上もしくは延床面積100㎡以上の建築物は、耐火建築物とする必要がある。

2階建て以下かつ100㎡未満の建築物のみ、耐火建築物としなくても良い。ただし、準耐火建築物とする必要あり。)

一般的な住宅規模で想定すると、3階建て住宅であったり、12階建てでも100㎡以上の住宅においてでも、耐火建築物とする必要があります。

そのため、従来、上記ケースにおいては、鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨造の耐火建築物住宅として対応することが、ほとんどでした。

勿論、鉄筋コンクリート造・鉄骨造にて住宅を建築することに問題はありません。

しかし、建築コストとして考えた場合、木造とすることが圧倒的に有利となります。

従来であれば、良い土地が確保出来たとしても、建築コストを含めた総額として検討した場合、予算に合わず、計画を断念するというケースも見られていましたが、耐火木造建築物とすることにより、建築計画が可能となるケースが多くみられます。

木造耐火建築物

3.準防火地域での耐火木造住宅

都心部のほとんどのエリアで指定されている準防火地域

その準防火地域においては、1500㎡以上の建築物・4階建て以上の建築物は耐火建築にする必要があります。

1500㎡以上の住宅となると、なかなかありませんが、4階建て、5階建ての住宅となると現実的なものとなります。4階建てまでは、1時間耐火でよいですが、5階建て以上となると2時間耐火が要求されるため、住宅用途では、5階建て以上となると実績が少ないですが、共同住宅・オフィスなどの分野では、実例が増えてきています。

(参考)準防火地域で準耐火建築とする必要ある建築物

3階建ての住宅(4階建て以上は耐火建築物)または 延べ床面積500㎡以上

4.特殊建築物での耐火木造

準防火地域・防火地域指定による耐火建築物の必要性を上述しましたが、特殊建築物においては、防火指定とは関係なく規模により、耐火建築物とする必要が出てきます。

その中で、学校・共同住宅・老人保健施設などは、利用の特性も踏まえ、木造耐火建築物とする事例が増えています。

(参考:上記特殊建築物は、建築基準法だけでなく、各担当省所管の法令により、耐火建築物とすることを要求しているものもあります。)

5.耐火建築とすることによる土地有効活用

法的に、マストの要件として耐火建築物が要求されていなくても、土地活用のために、耐火建築とすることもあります。

東京都建築安全条例では、共同住宅に対し、窓先空地の設置を要求しています。

例えば、道路に面しない住戸が200㎡ある場合、通常であれば、2M幅の窓先空地が要求されますが、耐火建築物とすることにより、1.5M幅とすることが可能で、その分、土地を有効に活用することも可能です。

6.準耐火建築物と耐火建築物との違い

「準」という字の有無による違いですので、感覚的には、準耐火建築物は、無指定の建築物と耐火建築物との中間ぐらいに位置するものと思いがちです。

しかし、その差には大きな違いがあります。

例えば、分かり易い事例として、耐震壁となる室内の間仕切り壁の場合、

●無指定のその他建築物→ 木材柱の両面に厚さ12.5mmプラスターボード

●準耐火建築物 → 木材柱の両面に 厚さ15mmプラスターボード

●耐火建築物  → 木材柱の両面に 厚さ21mmプラスターボード×2枚(計t42mm

準耐火と耐火の違いには、実に、3倍程の違いがあります。

そこには、設計思想の大きな違いがあります。

一般に、建物の室内可燃物が燃え尽きるまでには、30分~1時間程度掛かるものと考えられています。 準耐火建築物であれば、その燃焼する間、建物が倒壊することなく持ち堪え、人が避難出来ればよいとされているのに対して、耐火建築物においては、その間を経過しても、構造体に対して、全く影響を与えずに、燃え尽きた後、建物が建ち続けていることが要求されています。

つまり、プラスターボードで守られた木材柱が、準耐火建築物では、燃えても良いが、可燃物が燃焼する間だけ持ち堪えればよいのに対して、耐火建築物では、木材柱が焦げることさえ許されないという違いがあります。

7.まとめ

今後、防火地域・特殊建築物などの分野にて益々、活用されると考えられる木造耐火建築物。

これまで、法的に要件がある際に仕方なく的に実施されてきた耐火建築物であるが、設計思想の理解が促進されれば、一般消費者の耐震性・断熱性に対する要望と同様に、耐火性に対しても要求されることが考えられます。従来は、そんな安心感を鉄筋コンクリート建築にて満足していましたが、コスト競争力の高い木造耐火建築物は、有効に寄与するものと思います。

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